2011年7月5日火曜日

予防接種の重要性:ヒブや肺炎球菌のこわさ

本邦では近年になりヒブワクチンが承認され、任意接種ではありますが肺炎球菌ワクチンとともに乳幼児への接種が浸透してきております。しかし、小児科医としては“ようやく”という感がぬぐえません。ヒブ(インフルエンザ菌)による髄膜炎の罹患率は、10万人(5歳未満)あたり7-8人で、年間約400人が発症しています。肺炎球菌による髄膜炎の罹患率は10万人あたり2-3人で年間約150人が発症しています。死亡と後遺症を併せた予後不良の率は約30%です。

両菌による重症の髄膜炎や脳炎の患者さんを実際に診療し、ご家族のサポートをする立場にいるとき、“なぜ日本ではワクチン接種の体制が不十分なのか”、と非常にやるせない気持ちになっていました。

ワクチンには一定の頻度で副反応が起こりえますが、重症感染症の罹患率、死亡や重篤な後遺症の発生率を考えた場合、それを予防するためには、お子さんたちがあまねくワクチンを接種できるような環境が必要と考えます。地域や国全体で、ワクチンで予防できる疾患(VPD: Vaccine Preventable Diseases)を押さえ込み、根絶するという意識が大切だと思います。