50種類以上の血清型が存在するアデノウィルスによる感染症のなかに、「咽頭結膜熱」があります。咽頭結膜熱を発症させると言われている血清型はアデノウィルスのなかでも数種類で、3型、7型、2型、4型、14型などが知られています。プールの水を介して感染することもあるため、日本独特の言い方ではありますが、“プール熱”としても知られているかと思います。
この咽頭結膜熱は、文字通り“熱”があり、“咽頭炎”と“結膜炎”が存在するという意味ですが、あくまでも症状が揃った場合の呼び名ということになります。同じ血清型でも、咽頭からの感染であれば咽頭炎だけで済む場合もあるでしょうし、目からの感染であれば結膜炎のみ、あるいは結膜炎+咽頭炎という組み合わせでの発症があると考えられ、理論的には咽頭炎のみの患者さんからの感染でも結膜炎を発症することがあり得ますし、逆もあり得るということになります。
学校保健安全法では厳密には咽頭結膜熱であれば学校を休む必要がありますが、アデノウィルスによる咽頭炎のみであれば休む必要はありません。ただ実際は、アデノウィルス感染が疑われたり、アデノチェックで陽性と判定された場合に、学校や園では出席停止扱いにするという“雰囲気”になっていることが多い印象があります。
この対応は必ずしも間違いとは言い切れないところもあります。というのは、咽頭結膜熱の原因としては頻度がかなり低いものの、7型、14型などは重症肺炎を起こすこともあることが知られており、咽頭結膜熱の症状が揃わずともアデノウィルス感染症のお子さんに休んでもらうというのは、重症なアデノウィルス感染の患者さんをなるべく防ぐという意味ではある程度有用とも言えます。
いずれにしても、どの感染症でも症状には個人差があり、どのウィルスに対しどのタイミングまでを出席停止にすべきなのかについて、医学的な観点から意見を統一することはなかなか困難なのかもしれません。