いつもクリニックをご利用いただき、ありがとうございます。
4歳未満のお子様がいらっしゃるご家庭に、目黒区からおたふくかぜワクチンの票が届いたかと思います。
日本小児科学会として推奨しているのは、1歳過ぎに1回目を接種していただき、2回目を年長さんの学年(小学校入学前年度)に接種するというスケジュールです。麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)と同じタイミングでの接種です。したがいまして、
・1歳過ぎのお子様の初めてのおたふくかぜワクチン ⇨ 接種時に票をお持ちください。
・既に1回接種していただいているお子様 ⇨ 2回目は年長さんになるまでお待ちいただいて大丈夫です。(ただ、その際は今回の票はお使いいただけませんのでご了承ください。)
ご質問等ございましたら、どうぞご遠慮なくおたずね下さい。
少しわかりにくくて恐縮ですが、下記に見解を述べさせていただきます。
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まず、おたふくかぜワクチンは生ワクチンです。生ワクチンは不活化ワクチンと比較すると抗体が持続しやすく、接種回数も少なくて済みます。したがって、生ワクチンは数年間の間隔をあけて接種するのが一般的な方法です。
おたふくかぜについては、多くの国でMMRワクチン(麻疹・風疹・おたふくかぜワクチン)の2回接種が採用されており、日本の麻疹・風疹ワクチンと同様のスケジュールでかなりの予防効果が挙げられていることから、(MMRワクチンを採用していない数少ない国の一つである)日本におけるおたふくかぜワクチン2回目接種の推奨時期が小学校入学前年度となるのは、自然な流れかと思われます。また、10代になって罹患すると、おたふくかぜの合併症として精巣炎や卵巣炎などもあるので、2回目も忘れずに接種しておきたいところです。
実はどのワクチンでも、初回接種後に抗体が上昇しない一次性ワクチン不全、あるいは、抗体が一度上昇したが早期に減少する二次性ワクチン不全が一定の割合で生じます。ワクチン不全を生じる割合は、ワクチンの種類によっても個人によっても差があり、0%がもちろん理想なのですが、そうなることはありません。
水痘ワクチンは生ワクチンであるにもかかわらず、数ヶ月間隔で接種していることを疑問に思われた方もいらっしゃるかと思います。これは、その国における疾患の流行状況や罹患者の年齢層などをみて、一次性ワクチン不全対策を重視するのか、二次性ワクチン不全対策を重視するのかの医療政策の違いと言えます。数年前まで、日本国内において水痘は幼児期の発症が比較的多い疾患でした。定期接種化され減少してきてはいますが、今もなお見られます。したがって、まず1歳過ぎにワクチンを接種し、抗体がうまく作られないお子様を極力減らすため、(一次性ワクチン不全対策として)あまり間隔をあけずに2回目を接種することで、低年齢児の抗体保有率を高めようという意味合いがあります。(アメリカでは数年の間隔をあけて接種しますが、ドイツでは日本と同様に数ヶ月間隔で接種するなど、国ごとに違いがあります。)
おたふくかぜワクチンは、世界的にMMRワクチンとして1歳過ぎに初回接種されていますが、実は2回目の接種時期は水痘ワクチン同様、国によって異なります。人口の多いアメリカは2回目の接種が4-6歳となっていますが、予防は十分機能しています。アメリカなどで主に大学生集団での流行が時々報告されることがありますが、ワクチン不全というより、時間経過による抗体量の減少による流行と考えられるため、3回目のMMR接種について議論が出たりしているようです。もう一つ重要なのは、高い接種率を保つことですので、日本の場合はMRと同時接種というところが現実的かと思われます。いずれにせよ、一次性ワクチン不全・二次性ワクチン不全対策が奏功しており、日本小児科学会の推奨する接種時期が妥当と考えます。