新院長より 就任のご挨拶
本日より目黒通りこどもクリニックの院長に就任しました藤田秀樹です。
こどもは、社会において守られるべき、弱い立場にあると言えます。そして皆さん、性格の個性や体質の個性など、様々な個性があります。我々大人は“守ってあげる”立場ではありますが、決して一方通行ではなく、実際はこどもから学んでいること、教えられていることがたくさんあると実感することが多々あります。そしてその結果、大人が守ってもらっていることもたくさんあるのではないでしょうか。
“診察”は“診て”、“察する”(この場合の“察する”は“深く調べる”という意味かと思います)と書きますが、診察室での診察だけで全てを把握することは不可能です。病気や症状の重さに関係なく、経過や現状を把握するにあたり、ご家族や、学校の先生を含めた周囲の大人の方々が“見”たり、“観たり”、“看たり”して得られた小さな情報が重要な手がかりになることがあります。その情報は、大人とこどもとの双方向のコミュニケーションが存在して初めて得られる情報ではないかと思います。
私は一般小児診療に従事しながら、これまで染色体異常、様々な症状を伴う遺伝性疾患、原因不明の症候群などの先天的なご病気をお持ちの多くのお子さんの診断・フォローに関わらせて頂きました。全員個性豊かで、数ヶ月ぶりにお会いすると必ずどこか成長していますので、それをご家族と一緒に体験させて頂けるのが本当に感慨深く、楽しみでもありました。ご家族の心配や苦労も同時に伝わって来ますので、なおさらです。いろいろな健康状態のお子さんがいるのも事実です。得意なこと、苦手なこともみんなばらばらです。言葉が上手に話せないお子さん、表現自体が苦手なお子さんもいらっしゃいます。ただ、一つ大事なことがあります。どんなこどもに対しても平等に、差別・区別することなく手助けをしてあげる努力を我々大人が怠ってはならないということです。また、どんなこどもでも“双方向”のやりとりが可能であるにも関わらず、ややもすれば無意識に大人から“一方通行”になることもあるかもしれません。その場合、気づいた人がブレーキをかけてあげたり、サポートしてあげたりするのも、社会全体が担った使命と言ったら言い過ぎでしょうか。
お子さんが体調を崩すとご家族が心配されるのと同様に、我々医療者も、なぜそのような状態になっているのか心配することから診療は始まります。当たり前ですがなるべく早く、そして少しでもその“心配”を払拭させて頂くことが我々の使命だろうと考えています。そのなかにあってクリニックとしては、限られた時間ではありますが来院されたお子さんの健康状態をしっかりと把握して方向性をつけるという作業を、保護者の方々、そしてお子さんと“双方向”で進めていきたいと考えております。
小さなクリニックの隣に、小さな保育所“みんなのおうち”を設けてあります。微力ではありますが、少しでも地域の皆様のお役に立てれば幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。略歴慶應義塾高等学校から慶應義塾大学医学部へ、同大学大学院医学研究科博士課程修了。国立成育医療研究センターを経て、2014年4月1日より目黒通りこどもクリニック院長に就任。医学博士、日本小児科学会専門医、臨床遺伝専門医。